
By: DncnH
こんにちわ。北関東も地方なんだけどな~とたまに思ったりする北関東在住の「もぐ@jikitourai」です。
さて少し古い話にはなりますが、日銀が「デフレ状況ではなくなった」とかなんとかを言ったことがきっかけが今回これを書くきっかけになりました。
日銀の黒田東彦総裁は7日の金融政策決定会合後の記者会見で、日本経済は「デフレ状況ではなくなった」と語った。企業が値上げに前向きになり「物価の基調は着実に高まっている」とみているためだ。
ただ新興国経済の失速は国内の景気や物価を押し下げている。日銀は物価見通しを月内に下方修正する方針で、市場では追加緩和観測が高まっている。
確かに物価は明らかに上がっていると思います。消費税が上がれば、商品に関わる原価やら間接費やらも上がるので、当然値段は上がってしまいますからね。それに合わせて利益も気持ち乗っけて来てる感じもします。
今回の問題提起
本当に賃上げされるのか?
ただ、上記の記事でも述べられているように、「賃上げの環境は整っている」と言うだけで、実際には賃上げされていないところがほとんどでして、果たして本当に賃上げされる未来が待っているのかというと大きな疑問が残ります。
※HNK記事では賃金上昇に関しても言及されていたのですが、削除されたので今は見られません。
中国経済の急ブレーキによる世界経済の先行き不透明さに加え、EU経済圏を牽引するドイツの主要産業でもある自動車に関して問題も起きたこともあって、世界経済全体の不安感は増しているようにも思えます。(中国の貿易統計見ても、ずっと対前年で下がりっぱなしですし)
こんな状況で企業が賃上げをするかというと、微妙なところですよね。何やら経済団体が法人税の引き下げを要求しているそうですが、法人税を下げた結果純利益は増えますが、それはきっと内部保留にあたるでしょう(あとは役員報酬とかね)。
そんな状況であれば、近々の日本は「デフレは脱却するけど、スタグフレーションに陥る」という見方が合ってるかもしれません。
『地方の衰退』が今回のテーマ
そこで私が危惧しているのは、「地方のさらなる衰退」なんです。都会に住んでいる方はなかなか分からないと思いますが、地方で生活するというのは意外とお金が掛かるんですよ。
そして、日本人の傾向として、若い人がどんどん都会へ出て行き、そこに定着してしまうという構造になってしまっています。
そんな状況を鑑み、日本の地方に対する問題点を私なりに書いてみたいと思います。
データから見る『地方から都会への人口流出』
以前ちょっと話題に上がったサイトがあるので、ここでのデータを参考にします。このサイトのデータの大元は総務省が公表している「住民基本台帳人口移動報告」ですので、その値と齟齬はない内容になっています。
参考記事 都市か地方か データで探る日本の潜在力ちなみに自然増減(死亡・出生)についてはここでは触れずに、住民の転入/転出にフォーカスしています。自然増減を加味してしまうと、もともとお年寄りが多い地域やダントツに出生率が高い沖縄など、別の視点での考察要素が入るので今回は考慮しないことにします。
2014年:転入超の都道府県
2014年で見た時の転入超について、都道府県別で見ると転入超は7都県だけです。具体的な内訳は以下の通りになります。
- 1位 東京都 : 76,027人
- 2位 埼玉県 : 18,375人
- 3位 神奈川県 : 14,887人
- 4位 愛知県 : 7,978人
- 5位 千葉県 : 6,759人
- 6位 宮城県 : 2,501人
- 7位 福岡県 : 1,530人
これらを合計する「128,057人」なので、日本の全人口からすると約0.1%とそこまで多くないと感じてしまいます。ただ、日本は47都道府県もあるのに、転入超が7都県というところが重要です。残りの40道府県は転出超になっているわけです。ある特定の地域に人が移動している傾向を示しています。
人口が増えている都県は、基本的に政令指定都市を含む都会地域になります。つまり、『人が多いところに人が集まる』という図式が出来上がっているわけです。人口移動統計では、どこの市町村村への移動が多いかは分からないものの、傾向としては概ねそのようになっていると思われます。
2014年:転出超の都道府県
では、逆に転出超になっている道府県について、同じく上位7つを挙げてみます。
- 1位 北海道 : -8,639人
- 2位 兵庫県 : -7,407人
- 3位 静岡県 : -7,114人
- 4位 茨城県 : -6,670人
- 5位 青森県 : -6,547人
- 6位 長崎県 : -6,080人
- 7位 岐阜県 : -5,480人
こうやって見ると、政令指定都市を含む道県でも人口は減っています。北海道は札幌市、兵庫県は神戸市、静岡県は静岡市がありますからね。俗に言う日本の三大都市圏である近畿圏の大阪・京都・奈良も流出超なわけです。
あらためて見直してみると、人口流入超のうち首都圏(東京・埼玉・神奈川・千葉)がほとんど占めていますね。首都圏だけで、転入超分の約9割も占めています。
つまり、2014年のデータだけで見た場合ではありますが、「日本は首都圏に人が移動している」ということが分かります(ちなみに、栃木・群馬・茨城は関東地方ですが人口は減っています)。
直近10年で見る人口移動の流れ

By: Yuichi Kosio
では、ここ10年で見た場合の人口移動はどうでしょうか。同様に先ほどのサイトに記載の数字を見てみます。
転入超の都道府県
- 1位 東京 : 705,870人
- 2位 神奈川 : 188,534人
- 3位 埼玉 : 116,761人
- 4位 愛知 : 111,821人
- 5位 千葉 : 95,282人
- 6位 福岡 : 28,178人
- 7位 滋賀 : 17,255人
転出超の都道府県
- 1位 北海道 : -120,828人
- 2位 福島県 : -97,338人
- 3位 青森県 : -69,020人
- 4位 長崎県 : -68,644人
- 5位 新潟県 : -51,676人
- 6位 秋田県 : -47,088人
- 7位 岩手県 : -47,014人
経年で見ても変わらない
2014年単年で見た時と傾向はほとんど変わりません。首都圏は大幅な人口流入が発生していて、北海道や東北地方はどんどん人が出て行っていることがあります。
首都圏と同じ関東地方である群馬・茨城・栃木も人口が減っています。電車で東京都心に通勤するのは、ちょっと離れすぎてて厳しいですからね。仕事を求めて引っ越してしまうのでしょう。
以上のことから、『首都圏の人口集中化、地方の人口減少』が明らかなことが分かりました。
お金が掛かる地方生活
話は変わって地方生活についてです。地方の人口減少の一因になっているのは、「地方生活はなんだかんだお金が掛かる」からなんだと、わたしは思っています。(あくまで要因の一つです)
地価は都心に比べれば低いので、住宅関連の費用は安く済みます。しかし、食料品や消費財は下手すると都会よりも高かったりするんですよね(野菜は地域によってはめちゃ安いけど)。都心のスーパーでは一店舗当たりのお客さんの数が多いので大量に仕入れて安くなりますが、地方のスーパーは店舗あたりの客数は減ってしまいます。
とは言え、各スーパーなどのストアによる自助努力によって価格が抑えられていることもありますが、そもそもスーパーに行くのに歩いて行く人は少ないです。基本的には車で移動することになります。都会のように、歩けばすぐコンビニに行けると言うわけではないですからね。地方は歯医者の方が多いくらいです。
都心に住んでいると「車なんていらいない」と思えるほど公共交通機関が充実しています。実際わたしも東京に住んでいた時は、車を使うのは週末だけでした。東京では車を持っていなくても、困るということは基本的にはありません。
車の維持はお金が掛かる
都心と違って、政令指定都市などを除く地方で生活していると、車がない生活というのは考えられません。通勤も車、買い物も車、外食するのにも車、遊びに出掛けるのも車です。
そうすると必然的に「自動車」を購入しないといけないですよね。そうなると必要になってくるのがこの辺の税金や諸費用です。
- 自動車税
- 重量税
- 駐車場代
- ガソリン代
- 自動車保険料
- 車検代
- 整備費用など
都心で掛かる電車代がガソリン代だと思えばその分は相殺して考えられますが、他のものはあきらかに都心に比べて多く負担しなければいけないお金になります。
※「自動車税」は地方税で、「重量税」も一部市町村の財源にはなるものの、市民が負担する税金
飲み食いするにもお金が掛かる
また、人付き合いが発生するお仕事をされている方はわかると思いますが、『飲み会』は仕事をする上でどうしても避けられないものです。しかし、車で移動しないといけない距離に住んでいる人も多いので、たいがい帰りは『運転代行』を頼むんですよ。これも余計な出費ですよね。都会で考えた場合、「飲みに行ったら帰りはいつもタクシーで帰るんだ」っていうのと同じですから。
そうそう、東京に住んでいる時は格安居酒屋なんてのがたくさん目に付きましたが、茨城に来てからは全くお目に掛かっていません(どこかにはあるとは思いますが)。個人的な感覚では、「東京よりも茨城の方が飲み代が高い」なんですよね。
大人数で行くような飲み屋でコースを頼んでも、普通に4000円くらいいっちゃいます。地方だから安いなんてことはありません。「3500円で飲み会計画しようとなると、お店が限られて困るんですよね・・・」という話を聞いたこともあります。
物価が別に安くない地方
別に地方だからといって、住民税が安いわけでもないですし、衣料品が安いというわけではありません。また、積雪がある寒い地域であれば、暖房のために灯油を大量に消費しますのでその金額もバカになりません。
唯一明確に安いのは『住居』に関わる費用です。地価は安いので土地は手軽な価格で買えますし、賃貸物件も東京に比べると北関東でも6割~5割くらいの価格が相場だと感じます。(もっと安いところもある)ただ、上記の余計に掛かってしまうお金と比較すると、地方の方が暮らしにお金が掛かると思っています。
あ、あと「野菜」は農業が盛んな地域だと安いですね。それくらい。
消費者物価指数で見てみる

By: Rene Schwietzke
ただ、わたくし一個人の感覚でお話ししてもしょうがない部分がありますので、統計数値も見てみましょう。
消費者物価指数ランキングが市町村ごとにまとまっていたので、こちらを参考にしてみたいと思います。こちらのデータは、51市の平均値を100としたデータです。

主要政令指定都市の消費者物価指数
- 横浜市 106
- 東京都区部 105.9
- さいたま市 103.3
- 千葉市 99.1
- 名古屋市 99.1
- 福岡市 97.5
人口減少が激しい道府県の市の消費者物価指数
- 札幌市 100.2
- 福島市 101.4
- 青森市 99.5
- 長崎市 102.4
- 新潟市 99.1
- 秋田市 97.3
消費者物価指数で見ても差は小さい
全体的に人口流入が多いランキング上位の都市の物価指数は高いですね。ただ、千葉市や名古屋市は100を切ってますし、むしろ福岡市なんて消費者物価指数が低い部類に入ります。
逆に人口減少が著しい道府県の主要都市を見てみると、秋田は格段に低い数値が出ていますが、他の市は割と平均的ですね。長崎にいたっては物価指数が高いです。さいたまと大差ないですね。
消費者物価指数ランキングを見ても、「地方だから物価が安い」という一般認識は誤っていることが分かります。都市部と地方部の物価に大きな差はありません。
仕事が少ない地方
『「田舎に仕事はない」はウソ』とか言っちゃう人もいますが、そんなことはなくて基本的に地方には仕事が少ないです。ただ、地方には地方でしかできない仕事というものがもちろん存在します。代表的なのは「農業」「林業」「漁業」「酪農」などでしょうか。
もちろん儲かっている企業・個人はいます。省庁のデータを見ると、漁業に関してはそこまで大きな落ち込みはないようです。ただ、「農業」をいきなりやろうとするのは難しいんですよね。わたしも稲作のお手伝いくらいはやりますが、田んぼってちょっと持ってる程度だと全然儲かりません。
農業はあんまり儲からない
出典 : 農林水産省
とりあえず昔から田んぼを持っているような地主からたくさん田んぼを借りて、大規模農業をやれば生活できるレベルになりますが、スケールを利かせないと農業はどうしても厳しいです。「天候」というリスクも負わなければいけない上、設備投資にもお金が掛かるし、そもそも田んぼや畑を用意しなければいけない。障壁は高いです。
そもそも、田植えの時しか使わないコンバインを購入した上で、毎年メンテナンスしなければいけないのはかなりコストパフォーマンスが悪いです。
林業も落ち込み
出典 : 林野庁
『林業』もここ数年はちょっとだけ伸びては来ているものの、過去30年で見るとかなり落ち込んでいます。スギ・ヒノキの素材生産量は増えていますが、素材価格が落ちているので、今後の住宅需要を鑑みると不安が残ります。
ハローワークで仕事を探すも・・・
また、地方で多くの人が従事する仕事が「工場勤め」なのですが、自動車産業などの景気がよい企業の工場がある地域には仕事がまだたくさんあります。(ただ、自動車工場は期間工の募集が多いだけという見方もあるので、それはそれで課題を抱えていますが・・・)
工場以外で働くとなると、仕事はかなり少ないのが現状です。求人サイトにはもちろん案件は載っていますが、その数は圧倒的に少ないです。しかも、求人サイトは掲載料が掛かりますからね。財務的に余裕がない中小はどうしてもハローワークに頼る形になります。
・・・が、ハローワークで求人を見ていると給料が安いのが多いんですよ。で、スキルはそこそこ求められたり。求職者視点で見ると、そりゃ給料も高くて仕事も多い東京に出て行く気持ちもわかります。
関係ないですが、わたしも東京でまた働きたいなと思ってしまうほどです。。。
コミュニケーションツールのデジタル化
若者が都心部へ流出しているきっかけに起因する1つとして、コミュニケーションツールが従来の電話からメール、そしてLINEやTwitter、FacebookといったSNSに発展していったことも挙げられると思い居ます。
従来多く情報を得るためのソースとなるものはテレビでした。しかし昨今はテレビ離れが叫ばれ、スマホの利用率は急上昇し、若年層は情報を得るためのソースはインターネットがメインになっています(新聞も雑誌も書籍も購買率が落ちています)。また、会ったことがない人でもSNSを通じて繋がりが生まれ、お互いの生活の様子が写真と動画で見えるようになってきました。
ゆっくりとした生活を好む傾向にある大人世代であれば、そういうのを知っても特に憧れることは少ないかもしれません。
ですが、若いうちって好奇心旺盛ですよね。都市部の賑やかで華やかな生活に憧れやすい傾向にあります。ですので、インターネットを通じて都市部の賑やかな生活に憧れて出て行ってしまいます。東京の真ん中にある大学の同級生は、かなりの人数が地方出身者でした。
地方の必要性

By: shankar s.
「それならいっそのこと全員が都会で暮らせばいいじゃないか」という考えもあるかもしれません。首都圏でも空き家は増えてますし、でっかいマンションは今も都市部で建設され続けています(それ以上に、地方の空家率は問題ですが・・・)。
ただ、都心はもはやオフィスビルと住宅地、町工場などで土地はいっぱい。なんだかんだ規模の大きめの工場地帯もあるものの、全国の工場を全部都心に持っていくことはできません。でっかい工場で働いたことがある人はわかると思いますが、歩いて移動しきれない規模なんですよ。自転車で移動するのは当たり前、もっとでかいところは構内を原付や自動車で移動します。
そんな規模の工場は、ポンポン都心には置けないですよね。製造業であれば騒音や公害の問題も出て来ます。そもそも、都心は土地が高すぎるので作れないわけです。そうすると必然的に地方に拠点を置くことになります。ただ、工場だけあればそこで生活できるわけではないので、ローカルな経済圏が必要になってきます。最低でも「衣食住」を満たすための環境は必要になります。
また、農業や漁業、酪農や林業などの農林水産業は、仕事場を移すということが簡単にはできません。いろいろな法律も関わってくる業種もあります。国産にこだわる日本人としては、そういった産業が必要であることは実生活で分かっていると思います。ただ、農業やってるから自給自足できるだろうというわけにはいかないので、やっぱり地域経済圏は必要になるわけです。
地方都市の減少も問題になる
人口移動調査を見てもらって分かる通り、人口が増加している都県は7つしかありません。しかし、政令指定都市は全国で20都市あります(東京都区部は行政区なので、政令指定都市には含みません)この20都市は15の道府県に含まれますが、人口流入が増えているのが1都+6県なので、9道府県は減っていることになります。
なんだかんだ政令指定都市は、その維持にお金が掛かっています。政令指定都市に認められるためには条件があるので、無理矢理市町村を合併して大きくするやり方も一時期問題になりました。
無理な合併はいろいろな軋轢を生みます。銀行の大合併を見てるとよくわかりますね(あれは金融システムの複雑さに起因している部分も大きいですが)インフラの整備には非常にお金が掛かるんですよね。
まとめ・・・きれない問題でした
すいません、ここで一旦締めたいと思いますが、これだけでなく地方衰退に関わる要因はたくさんあります。
少子化、高齢化、介護問題、核家族化、嫁姑問題、育児環境、仕事、生活基盤、税金などなど・・・。これからTPPも絡んできそうです。
少しではありますが、実際に『地方の衰退』について考えてみたときに、単視眼的になにかを提言できる問題ではないことがよーく分かりました。各省庁単独で考える問題ではなく、いろいろな省庁が連携して取り組まなければいけない複雑な課題です。
とりとめない内容になってしまいましたが、これは我々自身の問題でもありますので、意識していかなければいけないと感じました。